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Vol.28 もしも、あなたが「永谷園ホールディングスの社長」ならば

2017年3月10日発売の「BBT Real Time Online Case Study」 Vol.28には、以下の2本が収録されています。今回はCaseStudy1「あなたが『永谷園ホールディングスの社長』ならばどうするか?」の一部を公開いたします。

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│CaseStudy1│
あなたが永谷園ホールディングスの社長ならば、画期的な新商品が不足し利益が乱高下するなか、成長戦略をどう描くか?

 

│CaseStudy2│
あなたがヤマサ醤油の社長ならば、醤油の国内消費が減少するなか、どのような成長戦略を取るか?

 

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■あなたが「永谷園ホールディングスの社長」ならばどうするか?
QUESTION:今回のリアルタイムケース
あなたが永谷園ホールディングスの社長ならば、画期的な新商品が不足し利益が乱高下するなか、成長戦略をどう描くか?

 

 

【BBT-Analyze】大前研一はこう考える~もしも私が「永谷園ホールディングスの社長」ならば~

大前の考える今回のケースにおける課題とは
江戸時代に起源を持つ永谷園ホールディングスは、お茶づけや即席みそ汁・お吸いものなどを主力とする、和風即席食品の最大手である。創業以来、インパクトのあるテレビCMでヒット商品を多発し成長してきたが、1990年代以降は画期的な新商品がなく、成長は停滞している。独占的なシェアを持つお茶づけやお吸いものは市場が飽和しており、新たな需要の掘り起こしが課題となっている。また、市場が成長している即席みそ汁やふりかけは競合との競争が激しく、シェア拡大のための集中的な販促が課題である。

 

※本解説は2016/12/25 BBT放送のRTOCS®を基に編集・収録しています。

 

 

◆和風即席食品のトップメーカー

# 発祥は江戸時代、「お茶づけ海苔」で創業しヒット商品を多発

お茶づけや即席みそ汁・お吸いもので有名な永谷園は、和風即席食品のトップメーカーです。他にも中華風調理食品などの商品を展開しており、売上高は2016年3月期で791億円超に上りました。

創業は1953年ですが、その発祥は江戸時代中期にまで遡ります[図-1/永谷園ホールディングスの沿革]。

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 1738年、山城国宇治田原郷湯屋谷村(現・京都府綴喜郡宇治田原町)で製茶業を営んでいた永谷宗円が煎茶の製法を発明したことが永谷園の発祥です。煎茶は最も消費されているお茶で、現在国内で生産されるお茶の6割を占めます。この永谷宗円を始祖とし、分家筋10代目にあたる永谷嘉男が1953年に設立した「永谷園本舗」が現在の永谷園です。創業の契機となった商品が、歌舞伎の定式幕になぞらえたパッケージデザインでおなじみの「お茶づけ海苔」です。

1960年代から1980年代にかけて、相次ぐ新商品の投入とインパクトのあるテレビCMにより多くのヒット商品を生み出し、会社は大きく成長します。1964年には永谷園を代表するもう一つのロングセラー商品「松茸の味お吸いもの」、1970年代には即席みそ汁の「あさげ」、ちらし寿司の素「すし太郎」、1980年代には「麻婆春雨」などの中華風調理食品、大人にターゲットを絞った「おとなのふりかけ」など、次々とヒット商品を出し続けました。

1990年代以降は新商品投入が減速し、新たな成長戦略を模索。2000年代には健康志向商品や高級茶づけ「極膳」シリーズを投入して高付加価値化を図ります。そして2000年代終盤以降はM&Aによる多角化を進め、ラーメンの藤原製麺やスイーツ専門店の麦の穂ホールディングス、イギリスのフリーズドライ食品会社ブルームコなどを買収しています。

なお、2015年に持株会社制に移行して、持株会社である株式会社永谷園ホールディングスを設立、食料品の製造販売を手がける株式会社永谷園はそのグループ会社となりました。

 

 

# 和風即席食品トップ、「お茶づけ」と「即席お吸いもの」はほぼ独占

永谷園の事業別売上高構成について詳しく見てみましょう[図-2/永谷園の事業別売上構成]。和風即席スープが26.2%、お茶づけ・ふりかけが19.7%、贈答・業務用商品が7.3%と、これら和風即席食品が売上の53.2%を占めています。次に、ちらし寿司の素やチャーハンの素など食材に混ぜ込んで使用する調理食品類が32.5%を占めます。そして、近年の多角化戦略により買収した麦の穂ホールディングスを中心とする中食・その他事業が14.3%となっています。

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 主力の和風即席食品は国内トップシェアを誇ります[図-3/永谷園の主力商品の国内販売シェア~和風即席食品~]。即席みそ汁は28.6%でマルコメの26.2%と拮抗しているものの、お茶づけは77.8%、即席お吸いものは97.9%とほぼ独占状態にあります。

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 その他の主力商品については、ふりかけのシェアが13.4%で丸美屋、田中食品に次ぐ3位、寿司の素のシェアが30.4%でミツカンに次ぐ2位、そしてチャーハンの素では63.6%と2位の江崎グリコに大差をつけてトップです[図-4/永谷園の主力商品の国内販売シェア~その他~]。

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◆天井の低いマーケットで不安定な経営が続く

# ニッチ市場のトップメーカー、成長分野は限定的

和風即席食品ほかシェアの高い商品を多く持つ永谷園ですが、調味料市場全体を見ると、永谷園の主力商品の市場規模は小さいことがわかります[図-5/永谷園の主力商品と主要調味料の国内市場規模概観]。2014年のお茶づけ・ふりかけの市場規模は656億円、和風即席スープは581億円、粉末調味料は383億円、合計で1620億円ですが、これらすべてを合計しても醤油の市場規模1565億円とほぼ同程度なのです。つまり、永谷園の主力商品の市場規模は小さいうえ、すでに高いシェアを持っているため、成長分野は限定的という状況です。さらに詳しく見てみましょう。

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# 「即席みそ汁」と「ふりかけ」が成長を牽引

永谷園の主力商品の国内市場は長期的に拡大しています[図-6/永谷園の主力商品の市場規模推移]。1980年代後半から1990年代にかけては年平均成長率(CAGR)4.0%で拡大、1985年に約900億円だった市場規模は1999年に1600億円弱まで成長しました。2000年代以降は年平均成長率が0.6%と減速しますが緩やかに成長を続け、2015年には1600億円を超えました。

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永谷園の主力マーケットの拡大を牽引しているのは即席みそ汁とふりかけです[図-7/永谷園の主力商品の市場規模推移]。これはファミリー世帯の減少および単身世帯の増加に伴い、自炊で使用するみその消費が減少する一方で、即席みそ汁のニーズが高まっていることが背景にあります。また、ふりかけに関してはもともと子供向け商品としてのニーズが大半でしたが、大人向けを訴求した商品戦略が奏功し、全年齢層にニーズが拡大したことが成長要因となっています。即席お吸いものもわずかながら成長していますが、市場規模は小さく、すでに永谷園が約98%とシェアを独占しているため大きな成長は見込めません。

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お茶づけと粉末調味料の市場は1990年代後半にピークを迎え、その後は衰退を続けています。ただし、お茶づけ市場は永谷園のほぼ独占状態にあるため、衰退市場においても一定の利益は確保できるでしょう。

 

 

# 新商品不足、定番商品低迷により売上高はほぼ横ばい

ここで永谷園の売上高の推移を見てみましょう。1990年ごろまでは新商品の投入が続いて順調に成長を重ね、1990年代前半までは概ね右肩上がりで伸びました[図-8/永谷園ホールディングスの事業別売上高推移]。しかしそれ以降は画期的な新商品が不足したうえ、定番商品が低迷したことで売上高は減少に転じました。1997~1999年度にポケットモンスターとタイアップしたキャラクター商品がヒットしたことによる特需や、2008年度の藤原製麺の買収および2013年度の麦の穂ホールディングスの買収などにより一時的に売上高が増大しているものの、それ以外の売上高に大きな変化はありません。特需や買収の要因を除くとほぼ横ばいの状態です。

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 売上高が概ね横ばいの一方、利益は乱高下が見られます[図-9/永谷園ホールディングスの営業利益、純利益]。営業利益は、1999年度までのポケットモンスター特需により40億円超まで伸びたものの、翌2000年度にはその反動で4分の1に急落しました。その後は徐々に回復し、2011年度には再び40億円を超えましたが、2014年度になると円安や原材料費の高騰により30億円を下回っています。

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 これにはいくつかの複合的な要因が絡んできます。即席みそ汁やふりかけでは市場が成長している一方で強力な競合が存在しているため、シェア獲得のために価格競争を余儀なくされ、これが利益を圧迫する要因の一つとなっています。また、お茶づけや即席お吸いものなど、独占的シェアを持つ商品では価格競争は避けられますが、これらの市場は成長が鈍化・衰退しており、さらに定番のロングセラー商品であるがゆえに大幅な値上げもできないため、原材料費の変動によって利益が上下します。原材料費は為替の影響を受け、円高時には調達コストが下がり利益が膨らみますが、円安時には調達コストが上がり利益を圧迫します。このように、商品ごとに市場環境や競合状況が異なり、収益構造も異なっています。

 

 

 

◆商品の市場成長性に合わせた戦略を

# 課題はシェア拡大と新しい用途・レシピの開発

ここで永谷園の現状と課題を整理しましょう。これまでに見てきたように、同社の主力商品は和風即席食品や和風調味料ですが、状況は商品ごとに異なっています。永谷園の主力商品をPPM(Product Portfolio Management)分析によって整理してみましょう[図-10/永谷園のプロダクト・ポートフォリオ]。

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 市場の成長性が高くシェアの高い“花形”にあたる商品は「即席みそ汁」です。当面は永谷園の稼ぎ頭として収益を牽引していくことが期待できます。ただしトップシェアではあっても2位のマルコメと拮抗しているため、価格競争を強いられ、販促費用も増加します。収益性を安定させるにはシェア拡大が課題となります。

次に、市場の成長性は高いがシェアの低い“問題児”にあたる商品は「ふりかけ」です。ふりかけ市場では丸美屋が圧倒的なトップで、永谷園を含む2位から4位が拮抗している状態です。ここでもシェア拡大が課題となりますが、3位からトップを狙うにはかなりの開発費用、販促費用が必要となります。

そして、市場の成長性は低いがシェアの高い“金のなる木”にあたる商品群を見てみますと、「お茶づけ」「即席お吸いもの」「チャーハンの素」「ちらし寿司の素」などです。これらの商品群は当面の間、安定的な収益をもたらしますが、長期的には衰退していく事業です。しかし、お茶づけや即席お吸いものを粉末調味料として使用するなど、従来とは異なる新たな用途を開拓できれば成長の可能性があります。したがって、新たな用途開拓やレシピの提案が課題となるでしょう。

最後に、市場の成長が低くシェアも低い“負け犬”にあたる商品群ですが、これらは撤退を検討するべきです。

 

・・・・・・・・・・・<続きは書籍版で>

 

各ケースの”今”について、どのような課題を見い出し、あなたは何を導き出しますか?
ぜひこの書籍を通じて、”実践的な思考プロセス”を育ててください。

 

 

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