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Vol.27 もしも、あなたが「村上開明堂の社長」ならば

2017年1月27日発売の「BBT Real Time Online Case Study」 Vol.27には、以下の2本が収録されています。今回はCaseStudy1「あなたが『村上開明堂の社長』ならばどうするか?」の一部を公開いたします。

RTOCS27_表表紙_400

 

│CaseStudy1│
あなたが村上開明堂の社長ならば、
バックミラーをカメラモニタリングシステムで代用可能とする道路運送車両法の保安基準改正を受け、どのような成長戦略を描くか?

 

│CaseStudy2│
あなたが安川電機の社長ならば、
サービス用ロボットの市場拡大が予測される中、産業用ロボットで培った技術を活かしロボット事業の成長戦略をいかに考えるか?

 

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■あなたが「村上開明堂の社長」ならばどうするか?

QUESTION:今回のリアルタイムケース

あなたが村上開明堂の社長ならば、
バックミラーをカメラモニタリングシステムで代用可能とする道路運送車両法の保安基準改正を受け、どのような成長戦略を描くか?

 

 

【BBT-Analyze】大前研一はこう考える~もしも私が「村上開明堂の社長」ならば~

大前の考える今回のケースにおける課題とは

村上開明堂は自動車用バックミラーで国内首位のメーカーであるが、納入先はトヨタを始め日系自動車メーカーに偏重しているため世界シェアはわずかである。バックミラーは道路運送車両法の保安基準改正によりカメラモニタリングシステムの使用が可能となり、従来のバックミラーで培ってきた競争優位性は失われようとしている。自動車部品メーカーと車載機器メーカーが連携して電子ミラーの開発を進める中、同社は独自開発路線をとっている。今後、電子ミラーの普及により競争条件が大きく変化していく中、技術力およびコスト競争力を確保し、欧米や新興国の自動車メーカーへ販路を拡大していくことが課題となる。

 

※本解説は2016/8/7 BBT放送のRTOCS®を基に編集・収録しています。

 

 

◆内外のシェア格差をどう埋めるか。海外展開が非常に重要

# 国内トップシェアだが世界シェアはわずか

村上開明堂の創業は1882年(明治15年)、静岡県静岡市で金具やブリキ細工を製造したのが始まりです。1897年(明治30年)には鏡の製造を開始し、現在のミラー事業に至ります。当初は女性がお化粧に使う鏡台などを製作していましたが、1958年にトヨタ自動車との取引が始まり、現在では自動車用バックミラーで国内トップのサプライヤーとなっています。売上のうちトヨタ向けが37%を占めていますが、トヨタの系列会社というわけではなく、トヨタと資本関係もありません。タイを中心としたアジアや北米にも生産拠点を置いており、内外を含めた連結売上高は2016年3月期で657億円弱です。

バックミラーはドアミラーとルームミラーに大別されます。それぞれの国内シェアを見ると、ドアミラーで41.9%、ルームミラーで47.4%といずれも村上開明堂が圧倒的なトップシェアを占めています(図-1)。一方、世界シェアはわずかで、ドアミラーで6.4%、ルームミラーは数%に過ぎません(図-2)。

スライド1

スライド2

 

 

# 納入先は日本のメーカーのみ。トヨタへの高い依存度

ドアミラー各社の完成車メーカーへの供給状況を見てみますと、村上開明堂はトヨタ自動車や三菱自動車ほか日系自動車メーカーのみに供給しています。一方、世界大手3社を見ると、日米欧の完成車メーカーに対して幅広く供給体制を構築していることがわかります(図-3)。

スライド3

ルームミラー各社の供給状況もまったく同様であり、村上開明堂が世界シェアを伸ばしていくためには、欧米や新興国の完成車メーカーに対していかに販路を拡大していくかが重要な課題となります(図-4)。

スライド4

村上開明堂の販売先別売上高を見てみると(図-5)先述の通りトヨタ向けの販売が200億円前後と安定した収入源となっています。また、トヨタ向け以外の販売が増収を牽引しており、売上高に占めるトヨタ依存度は2002年の47%から2016年には37%まで減少しています。

スライド5

 

 

# 生産拠点の海外シフトで堅調な成長

事業別の売上高を見ると、創業初期より営んでいた建材事業は縮小の一途をたどり、2016年3月に売却撤退、現在は自動車用ミラーシステムの単一セグメントとなっています(図-6)。そのミラーシステム事業は90年代後半から2000年代初期に国内自動車販売不振のあおりを受け低迷していましたが、その後、日系自動車メーカーの海外生産シフトに追随する形で海外売上高が増収を大きく牽引しています(図-7)。現在では海外売上高比率が4割程度を占めるようになっており、またこの海外シフトに呼応して、同時期から利益も伸びてきています(図-8)。

スライド6

スライド7

スライド8

 

 

 

◆ルームミラーの電子化/ミラーレスの時代がやってきた

# 保安基準改正による電子ミラーの認可

自動車用バックミラーに関しては、2016年6月17日に国土交通省が道路運送車両法の保安基準の改正を発表、カメラモニタリングシステム(CMS)、いわゆる「電子ミラー」を使用することが可能となりました。

過去にも保安基準の改正をきっかけとするバックミラーの進化、および技術トレンドの変化がありました(図-9)。かつての日本ではバックミラーは、ボンネットの上に取り付けるフェンダーミラーしか法令(道路運送車両法第44条)で認められていませんでした。しかしこれが、ドアミラーが主流である米国その他海外の自動車業界から非関税障壁だと指摘され、1983年にドアミラーも認められるように法改正されたのです。現在、フェンダーミラーはほとんどなくなり、ドアミラーが主流となっています。それに伴いミラーは大型化、軽量化が進み、視認性を高める技術として防眩(ぼうげん)性能や防滴性能が追求されていきました。

スライド9

今回、2016年6月の法改正により従来のミラーはカメラとディスプレイに代替されることになります。これにより、視認性を高める技術トレンドはカメラ性能、画像処理性能、ディスプレイ性能の追求へと移行していくことになります。村上開明堂がこれまで培ってきた技術とは全く異なる分野の技術を必要とするため、いち早く要素技術を確保し競争力の高い製品を投入していくことが会社存続に直結する大きな課題となります。

 

 

# ルームミラー兼用の“インナーディスプレイ”を2タイプ発表

村上開明堂も法改正公布に合わせ、ルームミラーにカメラモニター機能を搭載した電子ルームミラーの開発を発表しました。1画面+2カメラのハイブリッドタイプ(図-10)と3分割画面+4カメラのマルチミラータイプ(図-11)の2タイプとなっています。この特徴を図-12にまとめました。

スライド10

スライド11

スライド12

 

村上開明堂の電子ミラーの最大の特徴は、ミラーがディスプレイを兼ねていることです。電源ON時にはディスプレイとして機能し、電源OFF時には通常のミラーとして機能します。設置場所は長年の安全実績のあるルームミラーの位置とし、カメラのデジタル化と画像処理技術により夜間でも高い視認性を実現しています。リバースギヤ作動時にはこれまで死角となっていた車輌後方下部の確認が可能となっています。以上はハイブリッドタイプ、マルチミラータイプに共通する特徴です。

マルチミラータイプはハイブリッドタイプの2つのカメラに、さらに左右のドアミラーの位置にもカメラを設置したものです。側方カメラの視界は従来のドアミラーよりも大幅に拡大しています。インナーディスプレイは3分割表示され、視点を移動せずに後方と左右後方の3方向を一度に確認可能です。

 

 

# ルームミラーの単なる電子化では商品魅力に乏しい

時代の変化に対応し、ミラーレス車という新たな技術革新に対応した商品開発を行った――村上開明堂の発表は、次世代カーに対する1つのコンセプトを提示したと評価できるものだと思います。しかし、従来のミラーシステムから電子ミラーへの転換が進むと、必要とされる技術も競争条件も全く異なってきます。ミラーレス車時代の後方視認のあり方については、これまでの常識を疑いいったんゼロベースで再考する必要があると考えます。

村上開明堂のインナーディスプレイは従来のルームミラーに相当するものですが、搭載位置までルームミラーと同じである必要はないでしょう。車内で後方(および側方)を見る場合、従来は鏡だったからこそ“その位置”になければ適切に映し出すことができなかったわけですが、もはやカメラで撮像しているのですからディスプレイはどこに設置してもよいはずなのです。完成車メーカーもこれまでにない発想でデザインや設計を行うことになりますが、「従来のミラー位置でないと機能しない」という制限があれば、ミラーレス車時代の開発競争に後れを取ることになりかねません。つまり「ミラー機能付き」にこだわる必要はないということです。

ではどこに置くか。運転席の正面、ダッシュボードの上です。右ハンドルで運転しながら“左上”のルームミラーをチラチラ見るというのは、慣れない人には非常に難しいことですし、慣れているとしても負担の大きい行為です。ドライバーをこうしたストレスから解放することに、ビジネスチャンスと大きなチャレンジが存在します。

 

 

# ダッシュボードとの一体化で高付加価値化を目指せ

ダッシュボードの製造は、自動車メーカーに直接部品を供給する一次請け企業(Tier1/一次サプライヤー)の事業領域です。ダッシュボードを得意とする日本の代表的なTier1メーカーにはデンソーやカルソニックカンセイなどがありますが、こうしたところが計器類の製造や組み立て・電気配線(ワイヤーハーネス)まで全部手がけ、最終的に自動車メーカーに納入したらあとは取り付けるだけの状態になっています。村上開明堂も国内ミラーに関しては最大手のTier1ですが、電子ミラー開発にはこうした他の部品メーカーとの連携が必要となってきます。村上開明堂の成長戦略上、鍵となるのは、インナーディスプレイの組み込みをダッシュボードのTier1メーカーに対してどう提案していくか、ということになります。

 

 

# 映像機器・画像処理関連企業との提携が必須

さて、競合他社の動向を見てみましょう。電子ミラー市場(図-13)にはいくつかのTier1メーカーのほかにも、映像機器や画像処理関連企業が参入しています。電子ミラーの開発・供給体制を見ると(図-14)映像関連や車載機器のメーカーが競合のTier1と出資や共同開発で提携している一方、村上開明堂は独立した状態にあります。技術面での補強を図るためにも、こうしたメーカーと組むことが必要です。

スライド13

スライド14

 

 

 

◆国際競争力の強化と高付加価値化で海外に打って出よ

# 技術力の補強と“デジタルコックピット”の開発がポイント

村上開明堂の課題は以下の3つに整理できます(図-15)。1つ目は、映像関連技術の確保です。従来のミラーに関する技術は長年の事業実績によって蓄積されていますが、電子ミラーにおける技術力は不足しています。カメラや画像処理やディスプレイに関する映像関連技術を確保する必要があります。2つ目は、欧米完成車メーカーへの販路開拓です。3つ目は、車載機器との一体的システムを開発し、ダッシュボードのTier1メーカーと提携して“デジタルコックピット”を提案していくことです。

スライド15

3つ目のデジタルコックピットに関しては、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems:先進運転支援システム)の開発が重要になってきます。例えば、後方から高速で大型車両が急接近してくると、それをカメラやセンサーで検知してインナーディスプレイに映し出すだけでなく、警告を発し回避を促すようなシステムです。従来のバックミラーであれば、ドライバーが対象を「認知」し、危険かどうかを「判断」してから「回避行動」を行いますが、ミラーがカメラに置き換われば、ADASにより自動で危険を検知し事故を回避するようになります。単にルームミラーを電子化する、カメラに置き換えるというだけではなく、電子化ならではの付加価値をあわせて提供することに、この先の社運がかかっているのです。

一足飛びにデジタルコックピットを提供する前に、かつてのカーナビゲーションシステムがそうだったように、既存の車両に別付けで搭載するようなユニットの開発販売というのもあり得るでしょう。いわゆるレトロフィットのやり方です。5年から10年の間はそうした商品展開で移行期間を設けて切り替えていくという方法もあります。

 

 

・・・・・・・・・・・<続きは書籍版で>

 

各ケースの”今”について、どのような課題を見い出し、あなたは何を導き出しますか?
ぜひこの書籍を通じて、”実践的な思考プロセス”を育ててください。

 

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