【第2部】
“はじめて”の体験を通して人に感動を与える喜び ~未開の地を開拓していく醍醐味とは?~
(二宮祐さん)

【第2部】“はじめて”の体験を通して人に感動を与える喜び ~未開の地を開拓していく醍醐味とは?~(二宮祐さん)
先週から連載がスタートした、二宮祐さん(Bond-BBT MBAプログラム2期生として受講、現在大前研一が主宰する経営者ネットワーク「向研会」会員)の記事を今回もご紹介します。

「インド進出請負人」という異名をもち、現在は地図情報サービスを提供するゼンリンのインド支店長を務める二宮さん。インドでのビジネスを専門に、長い間インドでお仕事をされていらっしゃいました。そのような中で二宮さんが感じる、インドでビジネスをすることの魅力、そして大変さとは何なのでしょうか?

今回は、その点にフォーカスしてインタビューをご紹介したいと思います。

▼これまでの記事はこちら
【第1部】地図情報サービスを通してインドをもっと豊かに!インド進出請負人・二宮祐氏の挑戦

Q. 以前のお仕事も含め、インドでのビジネス経験が長いとお聞きしています。だからこそ見えてくる、インドで仕事をすることの魅力は何でしょうか?

ひとつは、「未開」が本当に多いということです。自分の手で、自分の力で開拓し市場に足跡を残す事ができます。20年前、電機メーカーで最初のインド赴任のときにカラーテレビ販売をしていたことがあるのですが、ルーラル(田舎)エリアでは当時まだインドにはカラーテレビが無く、デモを見せたとき子供たちが「ワ~ッ!」と大いに沸き、感動した表情を目の当たりにしたことがあります。本当に目がキラキラしていて、印象深い出来事でした。現地の人にこんなに喜びを与える事ができるのか、と衝撃に近い物を感じました。

位置情報サービスもそうですね。例えばカーナビなどはデリーではドライバーは殆ど使い方を知りません。地図が読めなくとも、インドの方言14言語にも対応の音声ガイダンスがありますから、英語がわからないドライバーも「かなり早く目的地に着いた!」という驚きの反応に直に触れることができます。

先進国では滅多に経験出来ない“はじめて”の体験を通して感動を与えることができる。それってとても魅力的なことなのではないでしょうか。

もうひとつは、「日本人が忘れてしまった」かつての日本の手法が十分に通用しているということですね。これはこれまで数百以上のインドのオフィス、生産現場を訪問した実感なのですが「終身雇用や年功序列」以外の日本的な手法、例えば接客、陳列方法、社員運動会、5S、社員表彰などが非常に有効に機能すると感じています。給与はもちろん大切な要素なのですが、給与以外の内容でスタッフのモチベーションを上げることに日本企業は、実は長けているのです。そのような過去に日本でうまくいっていた手法が、通用する土壌がインドにはあります。もちろん、その形は業界や企業によって異なりますが。

india

インドは激変しています。それに適応しなくてはならないのですが、長年インドでビジネスをしていて感じるのは「現地の人と一緒になりながらビジネスを組み上げる」必要があるということ。

私の最初のインド赴任の1990年代は日本企業がビジネスにおいて優勢に立っていたので、日本でうまくいったやり方をそのままコピーして行い、現地の人にそのまま教えていれば成果につながっていた時期もありました。ただ、それは日本企業が世界的に優勢で、かつインドにそのノウハウが殆どなかったからです。

私の担当する営業現場では日本で使っていた年度・四半期・月度・週間計画表、週報、店頭チェック表を使っていました。日本から持ち込み、そのまま英訳、売上はチームで達成すると全員の評価を上げ、だるまに目を入れて達成をチームで祝ったりもしていました。当時はこれが面白い様に業績UPに貢献したのです。

ところが、現在は異なります。また、環境も当時とは異なっています。そのまま日本式を持ち込んでもダメで、現地の状況に合わせてカスタマイズをしなくてはならないです。なので、あくまでも現状を分析、課題抽出を行ってから要素を活かすということが大切です。

日本的経営の良い要素を掘り起し、現地向けにアレンジしていけばインドでは少なくてもまだ十分にやれます。特に製造系に於いては日本企業を引退した方々の知見を大いに活かすことができるのではないでしょうか。

あとは、インド人から学ぶことが大いにあるということですね。彼らは日本人に比べると決断が非常に速い。3つ選択肢があればすぐに決断してしまいます。もちろん、その決断が外れることもありますが、その分、修正も早いですし、成果にもすぐにつながります。決めるまでのプロセスを少なくして的確に判断ができるのです。先日、ビジネスパートナーがこれまでとは異なる全く新しい販路(Eコマース)で商品の開拓を始めた事があったのですが、その際「戦略を変更するのか?」と私が問いただした時、「違う、新しいOPPORTUNIYT(機会)を追っただけだ」とのコメント。インドにおいてEコマースという倍々ゲームの販路を活用すれば、一瞬にして新しい顧客が開拓できる、このフットワークは日本の数倍も軽いものです。

特に、一緒に仕事をしている方々はアメリカ帰りの人が多いので、前例に振り回されないですし、駄目だと思ったらすぐに方向転換をします。そのスピード感は参考になりますね。多くの日本人は「新興国」を見下していますが、Eコマース等における彼らの打ち手は目を見張るものがあります。

Q.逆に、インドでビジネスをされていて苦労すること、大変だと感じることは何ですか?

ハード面とソフト面、それぞれあると思います。

まずはハード面、つまり環境など自分では変えられないものとしては、夏に50度(冬は1度まで下がる)になるとか、(主に北インドで)空気環境汚染はありますね。デング熱等の病気もそうです。停電も頻繁にあります。あと、私は牛丼が大好きなのですが、宗教上の理由で食のタブーが多く牛・豚・魚介類は入手困難。デリーには日本食スーパーもできましたが販売価格は日本の6倍以上、和食好きの方は大変さを感じることはあると思います。

次はソフト面、つまり自分で変えようがあるものですね。特にコミュニケーションに関わる点でしょうか。私もコミュニケーションの取り方を日本人同士の場合と切り換えてビジネスをすることの大切さを感じています。彼らは連絡なしに予定に遅れることはよくありますし、お願いは日本人だと1回で済むところを何度もしないとやってくれないということも多々あります。日本人は交渉下手、インド人はタフという話を聞くこともありますが、決してそのようなわけではありません。コミュニケーションの取り方の問題なのだと思います。

“はじめて”の体験を通して人に感動を。(Bond-BBT MBA事務局より)

今回の記事はいかがでしたでしょうか?

主にインドでビジネスをすることの魅力についてご紹介をいたしましたが、未開の地を開拓していく大変さはあるものの、二宮さんにとってはそれ以上の醍醐味があるのだと思います。「“はじめて”の体験を通して感動を与えることができる。それってとても魅力的なことなのではないでしょうか。」という二宮さんのお言葉がとても印象的でした。

また、日本的経営の良さが活きる土壌があるという点、意外に思われた方もいらっしゃったのではないでしょうか。日本企業が進出して現地に貢献し、活躍していく余地はまだまだ多くあるのではないでしょうか。

次回は連載の最終回です。最近、インドでは起業をする20~30代の日本人が増えてきているとのこと。それはなぜなのでしょうか?次回もお楽しみに!

▼続きはこちら
【第3部】現地の方々のためにならないビジネスは、決して長続きしない。

▼これまでの記事はこちら
【第1部】地図情報サービスを通してインドをもっと豊かに!インド進出請負人・二宮祐氏の挑戦

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